【Substance Painter】初心者さん向け講座③(テクスチャ編)

はじめまして!そして前回、前々回のブログをご覧になられた方こんにちは!
背景デザイナー、奈良です。
今回で最終回となりますが、最後までどうぞよろしくお願いします!

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※この記事のシリーズは全3回を予定しております。他の記事は以下の通りです。
第1回:サブスタンスペインター初心者さん向け講座①(モデリング編)
第2回:サブスタンスペインター初心者さん向け講座②(ベイク編)
第3回:サブスタンスペインター初心者さん向け講座③(テクスチャ編)←いまここ!
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目次
1.テクスチャの作成
2.最後にオマケ


1.テクスチャの作成

さっそくテクスチャ作成に入っていきたいと思います!

まず、SPはフォトショップと同じくレイヤを重ねていくのがメインフローになるのですが、
色を重ねていくというよりは、むしろ材質や手触りを重ねていく、
と考えた方が正しいかもしれません。
そしてこの材質や手触りをレイヤマスクによってコントロールするフローが大半を占め、
ペンタブを使ってペイントする、という機会は実はそんなに多くないんです。
(ペンタブを握りしめている方、そのペンを机に置いて大丈夫です)
このことを頭の隅に置いておきながら作成していきましょう!

こちらの前回ベイクした後の状態から始めていきます。

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まず木材のテクスチャを作っていきます。
メインメニュー:Window>Views>シェルフ
シェルフ:マテリアルタグの中にあるWood Rough
レイヤウィンドウにドラッグ&ドロップしてみましょう。

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おお、一瞬で全体に木のマテリアルが貼られましたね!
SPはこのようにデフォルトでいろいろな素材が入っていますので、
素材をわざわざネット等で探さなくても良いのは利点の1つだと思っています。

初期状態だと木の色が薄く感じるので、
この木材マテリアルレイヤのプロパティのColorパラメータを調整します。

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ちょっとくすんだ色だったので、明るい茶色にしました。


ここでいきなり レイヤのプロパティ という聞きなれないワードが出てきました。
えっとですね、SPのレイヤは「塗りつぶしレイヤ」「ペイントレイヤ」「グループレイヤ」の3種類があり、
「塗りつぶしレイヤ」はプロパティというものを持っているんです。
このプロパティで色とか質感とかその他いろいろな調整することができるんです。


さて、改めて木材を見てみると木目が横向きですね。これを縦向きにしてあげます。

レイヤウィンドウ上部のこのアイコンをクリックし、リストから[Add filter]を選択します。
するとレイヤのカラーイメージの下に「フィルタ」というエフェクトが追加されました。

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このエフェクトのプロパティのフィルタスロットをクリックし、
選択ウィンドウから「Transform」を選択します。

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そして「Transform」のパラメータ「Rotation」で木目の向きを変えます。

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縦にできました!


またしても エフェクト というナゾのワードが出てきました。
これはフォトショップのレイヤースタイルみたいにレイヤに付与するものですが、
このエフェクトは遥かに高い拡張性、柔軟性、機能性を持っています。
レイヤのちょっとした付与機能どころか、
むしろこれ無しでSPは成立しないほど重要な働きをします。
このブログでは、その一端をお見せできれば良いなと思っています。


また話がそれてしまいました(汗
次は樽が何枚もの木板で作られているように溝を作っていきますね。

木のマテリアルレイヤの上に「塗りつぶしレイヤ」を追加します。

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この「塗りつぶしレイヤ」に黒マスクを追加します。

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そしてこのマスクに塗りつぶしエフェクトのAdd fillを追加します。
マスクイメージの下にAdd fill(塗りつぶし)エフェクトが追加されます。

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このAdd fillエフェクトで、溝となるマスクを作っていきます。
シェルフのアルファタグにある「Lines Wave」をここにドラッグ&ドロップします。

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Lines Waveのパラメータを調整し、このように細くまっすぐにします。

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現在のレイヤ階層はこんな感じになっています。

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ちょっと溝が真っ直ぐすぎて不自然ですね。
ほんのり歪ませてみましょう!
先ほどの塗りつぶしエフェクトの上にAdd filterでフィルタエフェクトを追加します。

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このエフェクトのスロットでBlur Slopeを選択し、パラメータも少し調整します。

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パラメータを調整し、このようになりました。
少し歪みが加えられたことがわかるでしょうか?

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マスクが出来たので、溝の色を変えていきます!
レイヤのカラーイメージをクリックしてカラーのプロパティ編集に切り替えます。

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プロパティのBaseColorの色を変更し、Heightを-0.3にして凹ませ、
Roughnessを1にします。

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ちなみにプロパティ上部の項目で、レイヤで編集するチャンネルが選べます。
編集するチャンネルだけにしておくと、
このレイヤで何を編集しているかが分かりやすくなります!

最後にレイヤのブレンドモードを乗算にしてこの塗りつぶしレイヤの調整は終わりです。

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もしNormalやRoughnessなどの他のシェーディングチャンネルの
ブレンドモードと透明度を変えたいときは、ここを変更してから調整します。

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次に鉄輪と木の板が接している個所に陰影を付けていきます!

溝を作成した塗りつぶしレイヤの上に
さらに塗りつぶしレイヤを追加し、黒マスクを作成します。
マスクに塗りつぶしエフェクトを追加し、
このエフェクトに、シェルフのProceduralsタグにあるBrick generatorを刺します。

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Brick generatorのパラメータを調整しながら、
2Dビューでも塗りつぶしエフェクトを拡大縮小して
陰影を入れたいところに合わせていきます。

位置を調整した陰影がちょっとシャープすぎるので、ぼやかしましょう。
Brick generatorが刺さっている塗りつぶしエフェクトの上に
Add filterでフィルタエフェクトを追加し、
Blurをスロットに刺してBlur Intensityを調整します。

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上手い感じにぼやけましたね!

ただ、このエフェクトで変な影が樽の蓋に出来てしまったので消さないといけません。

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Blurエフェクトの上にAdd paintでペイントエフェクトを追加します。

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ペイントエフェクトはその名の通りブラシでぬりぬりできます。
素直にペイントするのも良いのですが、ちょっと楽をしてみようと思います。

キーボードのを押し、ポリゴンフィルモードというモードに切り替えます。
これはいろんな単位ごとに塗りつぶしペイントができるモードです。
(モード中はモデルにワイヤーフレームが表示されます)

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このモードのプロパティでは、どの単位で塗りつぶすかが選べます。
左から三角フェースごと、四角フェースごと、メッシュごと、UVアイランドごとです。
今回は一番右のUVアイランドごとの塗りつぶしを使います。

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カラーは真っ黒にしておきます。

それでは3Dビューの樽の蓋付近をクリックしてみてみます。

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見事ワンクリックでマスクすることができました!
塗り終わったらキーボードの1を押し、普通のペイントモードに戻しておきましょう。

木材パーツのテクスチャはだいたいこんな感じでしょうか。


さて、残りの金輪部分に取り掛かる前に、少しレイヤの整頓をしておこうと思います。

まずグループレイヤをレイヤ階層の一番上に作成します。
そしてこのグループに今まで作成したレイヤをそのままの順で入れます。
(レイヤをドラッグ&ドロップでグループ内に入れられます)

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ついでにレイヤ名を分かりやすい名前に変更してあげます(レイヤをWクリック)

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このように後で見たときや、他の方が見たときに
どんなレイヤ構造か分かりやすいようにするとデータとしてとても見やすいです!

このあたりはフォトショップと良く似た操作ですので大丈夫じゃないでしょうか。

あと、鉄輪パーツも木になってしまっているので、この部分にマスクをかけていきます。
グループレイヤに白マスクを追加し、これにAdd paintでペイントエフェクトを追加します。

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木の蓋にマスクを掛けたのと同じように4キーのポリゴンフィルモードで塗りつぶしますが、
今度はメッシュ単位ごとを選択します。

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3Dビューの鉄輪部分をポチポチッとクリックしてみてください。

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鉄輪部分をマスクできました!


木のテクスチャが出来上がったので、次は鉄輪部分を作成していきます。

これも木材テクスチャとほぼ似たような手順で作ります。
まずレイヤ階層の一番上に
シェルフ:マテリアルタブ内のSteel Roughマテリアルをドラッグ&ドロップします。

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ちょっと色が明るかったので、明度を下げました。

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こんな感じなりました。なかなか重厚感のある鉄ですね!
(ついでにこの塗りつぶしレイヤ名を"ベースマテリアル"にリネームしておきます)


現状、樽全体が鉄マテリアルになってしまっているので、
先ほどの木のマスクとは逆に、今度は木の部分をマスクしていきます。

グループレイヤを作成して、レイヤ「ベースマテリアル」をこの中に入れます。
そしたらグループレイヤに黒マスクを作成、
このマスクにペイントエフェクトを追加します。
あとはおなじみ、4キーのポリゴンフィルモードでマスクの塗りつぶしをしていきます。

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おお!? なんだか樽っぽくなってきましたね!


どんどんいきましょう、さらにディティールアップをしていきます。
風雨に晒された劣化表現として赤サビを乗っけます。

"ベースマテリアル"レイヤの上に塗りつぶしレイヤを作成し黒マスクを加え、
このマスクに塗りつぶしエフェクトを追加します。

このエフェクトにシェルフ:Proceduralsタブ内のFractal Sum 2を刺します。

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このエフェクトのパラメータを変更して赤サビの分量、度合いを調整します。

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マスク調整が終わったら、今度はカラーイメージを選択して色や質感を調整します。

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ちょっと見づらいですが赤サビが追加されました!


さらにエッジにダメージ表現を入れるため、塗りつぶしレイヤを上に追加します。
黒マスクを追加し、マスクにAdd Generatorでジェネレーターを追加します。

ジェネレーターのプロパティにあるスロットをクリックし、
Metal Edge Wearを選択します。

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Metal Edge Wearのパラメータは以下のようにしました。

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ジェネレーターのパラメータはいろいろ項目があって面白いので、
パラメータのバーを動かして触ってみてください!

マスクができたら、カラーイメージのプロパティで色や質感を調整します。

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仕上げにブレンドモードをスクリーンにします。

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エッジが立って面が出るようになりましたね!
鉄輪部分も良い感じになりましたので、これで完成としましょうか。


さて、ここまでの作業でレイヤの組み方やコントロールの仕方が
なんとな~く分かって来たのではないでしょうか?

まずレイヤの構成は、
 1.質感、パーツごとにグループレイヤで分ける。
 2.グループの一番下にベースマテリアルレイヤを置く
 3.この上に汚しや劣化、ダメージ表現のレイヤを重ねていく

というのがオーソドックスなスタイルになります。
この構成なら、どのレイヤで何をやっているかもだいたい把握できます。

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そして各レイヤも、
 1.塗りつぶしレイヤを使用
 2.マスクを作成する
 3.マスクは各種エフェクトで調整
 4.カラーで色や質感を調整

というのが最もコントロールしやすいスタイルになります。
ペイントレイヤも稀に使いますが、やはり塗りつぶしレイヤがほとんどです。

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この基本的な構成さえ押さえておけば、
ほとんどの事ができるといっても過言ではありません!(十分過言ですね)

そしてこう思われたのではないでしょうか。

レイヤの中身が濃厚すぎ


はい、ということで最後の仕上げに行きたいと思います。
え、まだ完成じゃないの?と思うかもしれませんが、実は大事なことをやり忘れてました。

それはですね…
なんと今のままではノーマルマップが上手くテクスチャにならないんです!

どういう事?と思われるかもしれません。
ちょっとややこしいのですが、今の3D,2Dビューのノーマルマップの見た目は、
レイヤノーマルとメッシュマップノーマルが合成されちゃってる状態なんです。

試しにTexture Set SettingsのNormal Mixingという項目を見てみましょう。
これ、初期状態ではCombine(合体)になっているので、Replace(置き換え)にしてみます。

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すると3Dビューのモデルのディティールがなんだか粗く、寂しくなりました。
これがメッシュマップノーマルが合成されてないレイヤノーマルのみの状態で、
テクスチャ出力の際はこのノーマルしか出力されません。

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それでは改めてメッシュマップノーマルをレイヤに組み込んでいきましょう。

レイヤ階層の一番上に塗りつぶしレイヤを追加します。マスクは不要です。
マテリアルチャンネルをnrm(Normal)だけにします。
シェルフ:プロジェクトタブのメッシュマップのノーマルマップ
このレイヤのノーマルマップスロットに刺します。

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これで出力するテクスチャにもメッシュマップノーマルが乗るようになりました!

やっとこさ、これで完成です!!

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あとは、メインメニュー:ファイル>Export texturesで出力設定をして出力します。
出力先、出力形式、サイズ、そして出力したいチャンネルにチェックを入れて
レッツ エクスポート!!

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テクスチャ!! 完 成 !!


いかがだったでしょうか?
SPは取っ付きにくそうと思われるかもしれませんが、
少ないレイヤでもこれほどのテクスチャを作成することができます。

レイヤの自由度もそうですが、なにより非破壊性、メンテナンス性に優れていて、
SPを使うと「もうフォトショップには戻れねぇ…」という人がいるぐらい
ある意味中毒性の高いソフトでもあります。

ですので、もしこのブログを読んで「SPを触ってみようかな」と思っていただけたなら、
SP沼へようこそ。 大変うれしく思います。


では、つたない文章でお見苦しいところも多々ありましたが、
これにて「サブスタンスペインター初心者さん向け講座」お開きとさせていただきます。

最後までお付き合いいただきありがとうございました!!


2.最後にオマケ

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さらにいろいろ手を加えてみました!
木材の溝にハイライトを入れたり傷を入れたり、釘を追加などなど…
皆さんもいろいろな機能を触って手を加えてみて下さい!

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COYOTE 3DCG STUDIOはクリーク・アンド・リバー社が運営するゲーム専門3DCG制作集団です。
キャラモデル、背景モデル、3Dアニメーション、ツール開発などを得意としています。
新規立ち上げにおけるコンサルティングから量産制作まで幅広く対応可能な体制を保有しており、出向にも柔軟に対応しております。

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