戦国時代の最大のライバルと言ったら武田謙信と上杉謙信。
クリーク・アンド・リバー社 COYOTE CG STUDIO テクニカルチーム 戦国大好き人間の中林です。
今回は僕の中で悩んでいて、未だに答えが出ていなくて、これからも悩み続けていく問題である「専用ツールVS汎用ツール」です。
そもそものキッカケは?
これは僕がまだMelでツールを作り始めたころの話です。アーティストから動画をレンダリングする時にフィルムのアスペクト比を初期設定のままで間違えてレンダリングをしてしまうことが多いので簡単に設定できるツールが欲しいと依頼を受けました。
当時の僕の感じではアスペクト比を1つの値だけ設定できても効率が悪そうだったので、おまけでアスペクト比の値を入力できるように作りました。ある意味で汎用で使えるようにしたツールでした。
結論から言うとこの汎用にしたことは不評でした。理由はリーダーのAさんがアスペクト比を1.8と決定しても、Bさんが間違って1.6にしてしまったら結局チーム内で間違う可能性を秘めていたからです。
アスペクト比を1.6に設定したい仕事があった場合は、そのプロジェクトの時に改めてツールを依頼するとのことでした。
正直、駆け出しどころかTAになる以前の僕の考えではアスペクト比を1つにしか変えられないツールに意味があるのかと当時は反発を覚えた記憶があります。
今の僕なら、他にもフレーム数とかイベントの終了時間とか色々と間違いやすい設定を聞いて、ワンクリックで全て設定をするツールなどを提案するかもしれません。
専用ツールと汎用ツールの違いは?
こちらは僕がとあるプロジェクトに頼まれたツールのメニューウィンドウです。内容的にはフォルダ階層の深いシーンファイルを探すのが大変なので、特定のフォルダ以下を再帰的に探しての.ma.mbデータをリスト化してインポートなどができるツールです。おまけでシーンファイル名と同じ.jpg.pngファイルがあるとサムネイルが表示されます。
最初は、あるProject専用で作って好評で別のProjectからも依頼があって改良、さらに他のProjectから依頼があったので意を決して汎用ツールにしました。
専用ツールと汎用ツールでは明らかにメニューの数の多さが違いますね。
専用ツールのメリット、デメリット
- メリット
- 初回起動からほぼサムネイルまで表示されるので分かりやすい。
- プロジェクトのフォルダが確定してるので設定をする必要が無いためUIがスッキリ。
- デメリット
- 他のプロジェクトでは使えない。
- 使いたかったらTAに仕様に合わせてアドレス等を変えてもらう必要がある。
汎用ツールのメリット、デメリット
- メリット
- フォルダの指定ができるので複数のプロジェクトどころか、ローカルの設定でも使える。
- 多くの意見を聞けるので専用ツールにない機能が増えている。
- デメリット
- 初期設定のUIが多いので使いづらそうな印象がある。
実は完ぺきな汎用を目指すとオプションが増えて、ますます使いづらくなる。 - 予想外のフォルダ名への対応が難しい。
日本語はまだしも{[()]}や記号を使われるとTAが事前に予想できない。
- 初期設定のUIが多いので使いづらそうな印象がある。
これらメリットデメリットはこのツールをメインに上げてますが、専用ツールほど単純化できて汎用ツールほど複雑になることは共通してます。
未だに専用ツールが良いのか汎用ツールが良いのか迷うことがあります。この辺は最終的にはアーティストとのコミュニケーションで決めています。
本当にあった専用ツールの怖い話
これはTAあるある話です。
昔々とあるAプロジェクトで専用ツールを作ったTAがおった。そのツールは大層評判が良くAプロジェクトのアーティストからよくぞ作ったと感謝されつつAプロジェクトは終了して解散したそうじゃ。
それから数年後、離れ離れになったTAとアーティストが偶然出会って当時のAプロジェクトのツールの話で花を咲かせよった。そこでアーティストから一言「あのツールは便利だったので、今のBプロジェクトでも使ってますよ(つかってますよ……、ってますよ……、ますよ……)」
それはAプロジェクトの仕様通りのフォルダ構成でしか動かないはずのツールじゃったのに、Bプロジェクトでもエラーが発生しても必要なデータが吐き出せたので使い続けておったのじゃ!!
ちなみに別パターンとして、ある日Cプロジェクトのアーティストから声をかけられて「Aプロジェクトのツール便利ですね。Cプロジェクトでも使ってますよ(つかってますYo……、ってるZe……、Zeeeeetto!!)」
という話もあります。
この話の怖さが分かったら多分、TAとして一人前かもしれません。
そして、もしかしたらこれを読んでいるあなたの背後にお礼を言おうとしている別プロジェクトのアーティストが立っているかもしれません。