いまさら聞けない業界用語 ~ライティング編①~

はじめまして!
業界歴は十年を過ぎてから数えるのをやめました、
アラフォー3D背景デザイナーのtodaと申します。

今回は"いまさら聞けない業界用語 ~ライティング編①~"と題して
ゲーム背景のライティングについて、
用語を絡めつつ2回の連載で書かせていただこうかと思います。

このブログでは用語の厳密な定義とか堅苦しいのは置いといて
ザックリかみ砕いて、どういうものかを分かりやすくお伝えできればと考えています。
そんな感じなので、ゆる~く読んでいただければと思います。

ではゲーム背景にまつわる業界用語、
"ライティング"にフォーカスしていきたいと思います。


■ライト

まず最初に、当たり前ですがライティングにはライトが欠かせません。
3DCGにはどんなライトがあるのか、
Mayaという3Dツールにあるライトでざっと紹介していきます。

・アンビエントライト
環境照明。シーン全体を照らし陰影を作りません。
環境光とも呼ばれ、ゲームでもシーンの明るさ・色味を決めるために使用します。

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・ディレクショナルライト
平行照明。一方向へ平行に照らします。
その特性から、ゲームでは太陽光として使用されることが多いです。

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・ポイントライト
点照明。全方向に対して均一に照らします。
ゲームでは松明やかがり火などピンポイントな灯りとして使用します。

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・スポットライト
円錐照明。コーンで定義される狭い範囲を照らします。
ゲームでは懐中電灯やヘッドライト、サーチライトのような灯りとして使用します。

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・エリアライト
面照明。蛍光灯のように面で光を放ちます。
光の面積が広いので柔らかめの影になります。

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・ボリュームライト
体積照明。指定された形状でその空間内を照らします。
煙や霧、チリといった形状を持たないものを表現するのに使います。

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他の3Dツールやエンジンによっては微妙に名称が違ったりしますが、
ライトの種類や働きは大きく変わりません。

で、これらのライトを使ってライティングしていくんですが、
なんか種類とか働きとか言われても、どれをどう使えばいいのか分からんし、
なんかコツとかあるの?てなりますよね。
そこでまず、基礎的な照明技法の"三点照明"ってヤツを押さえておきましょう。


・三点照明
名のとおり三つのライトを使ったテクニックです。
ライトは役割ごとに以下のように呼ばれます。
キーライト  …一番明るいライト。
バックライト …被写体の後ろに配置するライト。
フィルライト …キーライトのほぼ対角線に配置するライト。

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この三つのライトでやっていることは、
キーライトで全体の印象を決め、
バックライトでアウトラインを出し、
フィルライトで影部分を持ち上げる、です。

ライティングで最も重要なことのひとつは”立体的に被写体を浮かび上がらせること”です。
三点照明はこの立体感を出す最も基礎的な技法ですので、
まずはこの技法で土台を作り、そこから位置や向き、色味、強さなどを変えながら
イメージに近づける、という手順でやってみると良いのではないかと思います。

ライトの種類とライティングの基礎をはこんな感じです。
では実際のゲームはどうライティングしているのか、その進化とともに追ってみましょう。


■ゲームライティングの基本設計

ゲームライティングの基本設計は環境光・太陽光という二つのライトを使用することです。

・環境光
シーン全体を取り巻く、特定のオブジェクトから照射されていない光。
3DCG空間で、光が直接当たらない部分が完全な黒色にならないように、
シーン全体の明るさ、印象を左右するもっとも基本的な光です。
これには陰影が出ない特性を持ったアンビエントライトを使用します。

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・太陽光
皆さんご存じの光。
これにはディレクショナルライトが適しています。
実際の太陽は巨大な点光源なんですが、地球には限りなく平行に光が当たりますし、
このライトには距離減衰設定がないので、光が減衰することもありません。

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アンビエントライトでシーン全体の明るさを決め、
ディレクショナルライトで太陽光をシミュレートする、
言ってみればそんなところです。

そして驚くことに3Dゲーム黎明期から今もこの基本設計はほとんど変わっていません。
ハード性能が上がり色々なことが出来るようになりましたが、
まずはこの二つを置いてから、というぐらい今でも全然使われている手法なんです。


■光の振る舞い

それではこれらのライトから放たれた光はゲーム中でどのように振舞うんでしょう。

まず、光には光源から直接放たれる直接光と、
この直接光がなにかに当たって反射・屈折・透過する間接光の二つがあります。

3Dグラフィックスではこの二つの光について、
直接光のみの光の振る舞いを直接照明(ローカルイルミネーション)
直接光+間接光の光の振る舞いを大域照明(グローバルイルミネーション)
と呼んでいます。(以降、GIと略)

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そして光源から放たれた直接光はなにかに当たって間接光となり、
反射を繰り返しながら徐々に減衰していく、
この光の軌跡を追いかけることをレイトレーシングと呼びます。(以降、レイトレと略)

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…とまぁこんな感じで光を扱っているのですが、
実のところほぼ全てのコンシューマゲームはローカルイルミネーション、
つまり直接光しかシミュレートしていません。
理由は単純で、レイトレによる間接光のシミュレートは処理負荷が重たすぎるからです。

ただそれでも、なんとかお手軽にレイトレによる間接光、
つまりGIライティング表現ができないか様々な試みがされてきました。
そしてハードの進化、技術の進化にともなって、
別のアプローチによって、なんちゃってですがGI表現ができるようになってきました。


はてさて、それではどんなアプローチでやっているのか、
そして光あるところに影があるよね、みたいなのを
次回"いまさら聞けない業界用語 ~ライティング編②~"で紹介していきたいと思います。

それでは、ここまで駄文にお付き合いいただきありがとうございましたっ。

後半へ続く~

COYOTE 3DCG STUDIO STAFF

COYOTE 3DCG STUDIOはクリーク・アンド・リバー社が運営するゲーム専門3DCG制作集団です。
キャラモデル、背景モデル、3Dアニメーション、ツール開発などを得意としています。
新規立ち上げにおけるコンサルティングから量産制作まで幅広く対応可能な体制を保有しており、出向にも柔軟に対応しております。

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