TA Nightレポート Unityで描く『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』の世界

20251024日、秋葉原UDX14階にある株式会社f4samurai本社にて「TA Night」が開催されました。今回のテーマは、人気スマートフォンゲーム『コードギアス 反逆のルルーシュ ロストストーリーズ』(以下、ロススト)の開発現場を題材にしたUnity開発のケーススタディです。会場には、テクニカルアーティストやUnityエンジニアなど、ゲーム開発の現場に関わるクリエイターたちが多数来場しました。

登壇したのは、株式会社f4samurai エンジニア部 クライアントエンジニアⅡ所属 畑俊樹氏、クライアントエンジニアI 所属 前田広夢氏、デザイン部 3Dデザイナー部門所属 若林諒氏の3名です。いずれも『ロススト』の開発初期から関わり、Unityによる映像演出・最適化・アセット運用など、実務に根ざした知見を共有しました。 後半は懇親会が実施され、講演者・参加者の交流が活発に行われました。

ナイトメアフレームを支える設計思想

まず講演の冒頭では、クライアントエンジニアI 所属 前田広夢氏より作品を象徴するメカ「ナイトメアフレーム(KMF)」のモデル制御について解説がありました。

前田氏「KMFはバトル・カットシーン・ホーム画面など、ゲーム内の多くの場面に登場する重要な要素です。そのため、どのシーンでも一貫した見栄えと動作を維持するための設計が必要でした。KMFモデルは素体モデルと武器付きモデルに分かれており、それぞれ元PrefabとPrefabVariantとして扱っています。

ポリゴン数は7,500以下、ボーン数は約80に統一され、テクスチャはベースマップ、ハイカラーマップ、リム&エミッシブマスクの3枚で構成されています。
また、Unity上で後から仮想的なボーン(Transform)を追加できる仕組みを導入し、Mayaに戻って修正する手間を省き、Unity内で完結できるワークフローを確立しました。
これにより、特定演出時のモーション補正やアニメーション調整が柔軟に行えるようになり、制作サイクルの短縮に寄与しました。

背景構成とアセット管理の効率化

前田氏「背景はField(全体/シーンアセット)・Map(構成単位/Panelを包含する)・Panel(最小単位/ゲーム上の1マス)の3層構成です。
Panel単位でPrefab化し、それをMap単位でScriptableObjectにまとめることで、1シーンで様々なパターンのPanelの組み合わせを実現しています。

さらに、エディタ上でPanelをドラッグ&ドロップして配置できる編集ツールを内製化しました。プランナーがビジュアルを確認しながら即時反映できるため、試行錯誤のスピードが上がり、チーム全体の生産性向上に繋がったと考えています。

Timelineによる演出制御と拡張

続いて、クライアントエンジニアⅡ所属 畑俊樹氏より、Timeline制御と描画・性能面の解説がありました。

畑氏「UnityのTimeline機能は、『ロススト』の演出全般で中心的な役割を担っています。
ストーリーのカットシーンからガチャ演出、タイトルアニメーションに至るまで、あらゆる箇所でTimelineを活用しています。標準のPlayableDirectorでは再生管理の自由度が低かったため、独自のラッパーコンポーネントを開発し、マニュアル制御での時間管理や、部分再生・スキップ・ジャンプ再生といった多彩な挙動への対応を可能にしました。

さらに、Timelineトラックを拡張して音声・エフェクト・Live2D・ポストプロセス・シェーダーパラメータの差し替えなどの機能を提供しています。

描画とポストプロセスの最適化

畑氏「描画パイプラインにはURP(Universal Render Pipeline)を採用しています。UnityChanToonShaderをベースに軽量化を行い、RGBチャンネルを活用したテクスチャパッキングにより、データ量を削減しました。

描画パスについては、SPARK GEARによるエフェクト描画を採用したことがポイントで、ステンシルを利用して“前面優先描画”を実現。複数の機体が重なっても、視点に近いものだけが適切に表示されるよう設計されています。

また、ポストプロセスではBloomやColor Adjustment、Depth of Fieldなどを効果的に活用しています。特定のキャラクターやオブジェクトにだけ発光を適用するため、カスタムBloomと呼んでいる拡張パスを構築しました。専用のShaderPassやRenderTextureを用意しフィルタすることでこのような機能を実現しています。

これらの細やかな制御によって、スマートフォン上でも“『コードギアス』らしい透明感と光の演出”を実現しています。

トゥーン表現による質感づくり

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最後に、デザイン部 3Dデザイナー部門所属 若林諒氏からは、質感設計の具体的な工夫について紹介がありました。 若林氏「ナイトメアフレームは“貴族の乗る機体”という設定なので、汚しや錆ではなく、清潔で光沢のある表現を重視しました。 戦車のような無骨さではなく、スーパーカーのような艶と反射を意識した質感になるようにUnityChanToonShaderをカスタマイズし、光源に対して滑らかに反射する面を再現しました。 リムライトとエミッシブを1枚のマスクテクスチャで制御することで、軽量ながら印象的な仕上がりを実現していて、結果として、キャラクター性を損なうことなく、立体感と“高貴さ”を両立した表現に成功しています。

ガチャ演出とリアルタイム制御

若林氏「ガチャ演出では、チェスの駒をモチーフにした昇格演出をリアルタイムで制御しています。

従来はエンジニアが複雑な条件分岐を管理していましたが、Timelineを用いた仕組みによってデザイナーが制御を担当できるようになりました。

各トラックのON/OFFを切り替えるだけで、期待度や当選結果に応じた演出を再現できるため、エンジニアの負担を減らしつつ、演出調整の即時反映が可能になりました。
開発終盤の演出ブラッシュアップにも柔軟に対応でき、制作効率が向上したと考えています。

開発をふりかえって

若林氏「開発チームはエンジニア6名、3Dデザイナー10名という少数構成で、開発期間は約2年半。コロナ禍のリモート体制を交えながらの進行で、多くの困難もありました。その中でも新しい技術やさまざまな情報を駆使し、多くの苦労と工夫のうえで無事にリリースすることができました。

運用フェーズでは、ほとんどのセクションで世代交代がおこなわれ、次世代の育成を行っています。さらに開発時の反省点については、新規プロジェクトにて改善アプローチを図り、日々プロセスの見直しと技術のアップデートに努めています。

懇親会の様子

講演終了後には、同会場で懇親会が開かれ、登壇者と参加者が軽食を囲みながら談笑し、技術的な質問や制作現場の話題が飛び交いました。 「Timelineを複数人で編集するときのコツは?」「URPの最適化ってどの段階で決めるんですか?」といった実務的な質問から、「どうやってあの“コードギアスらしさ”を出したのか」という制作哲学にまで話題は広がり、現場同士が情報交換を行う貴重な場となりました。 「こんなに実践的な話が聞けるイベントはなかなかない」と語る声もあり、学びと交流の両面で好評をいただけた回となりました。

まとめ

本セミナーでは、Unityを用いた実践的な開発プロセスが具体的に紹介され、特にTimelineの拡張運用、URPの最適化、シェーダーによる質感設計など、現場の課題を解決するための工夫が体系的に語られた点が印象的でした。 f4samurai社はツールの限界やさまざまな制約に挑みながらも、現場目線の改良を積み重ねて答えを導き出しており、「技術を“魅せる力”に変える」という積み重ねが、『ロススト』の完成度を支えていることを実感できるセッションでした。

nakabayashi nobukazu

12月11日(木)のTA Nightというイベントで登壇予定。
TAの歴史と未来について話します。
https://www.creativevillage.ne.jp/category/crv_event/168205/
ブログでTAに興味を持った人は是非、参加してみてください。

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