AIの進化により、モーション制作のワークフローも大きく変わろうとしています。
今回の「3D動かさNight」では、AIを活用した映像制作ツール「Autodesk Flow Studio」をテーマにセミナーを開催しました。実写映像から3Dアニメーションを生成できるAutodesk Flow Studioは、アニメーターの仕事にどのような変化をもたらすのでしょうか。
本記事では、実際のデモンストレーションを交えた講演の内容から、主な機能や活用方法、AI時代にアニメーターが意識したいことまでを紹介します。
Autodesk Flow Studioの特徴やモーション制作での活用方法、AIとアニメーターの今後の関係を知りたい方におすすめのセミナーレポートです。
Autodesk Flow Studioとは

Autodesk Flow Studioは、実写映像からモーションキャプチャやカメラトラッキングなどを生成できる、クラウドベースのAI 3Dツールです。専用スーツや複雑な撮影設備を使わず、映像をアップロードして処理を行うことで、編集可能なモーションデータを取得できます。
特徴は「撮影・アップロード・変換」というシンプルな工程で、動きの土台を作れる点
セミナーでは、複数あるプロジェクトタイプのうち、Mayaでの編集を前提とする場合は「Animation」タイプが適していると紹介されました(Lite 以上のライセンスで利用可能)。 変換処理はクラウド側で行われ、例えば5秒の映像なら30分ほどでモーションデータが生成されます。
FBXやUSD形式で書き出せるため、MayaでのHumanIKを使ったリターゲットや、アニメーションレイヤーでの調整もスムーズに行えます。 「まず動きを形にしてから、アニメーターが仕上げる」という新しいモーション制作のワークフローを後押しするツールです。
AIにすべてを任せるのではなく、制作の初期段階を効率化するツールです。
アニメーターが仕上げに集中できる点も、大きな魅力です。
AI学習とアップロードデータの扱い
セミナーでは、Autodesk Flow StudioのAI学習に使用されている映像について、次の3種類が紹介されました。
- 商用利用可能な映像
- Autodesk自身が撮影した映像
- 自社アルゴリズムで生成した映像
この3種類のみ。いずれも、権利関係がクリアなものだけが学習に使われています。
また、FreeからProまでのプランでは、アップロードした映像が機能改善に使用される可能性があります。
学習への使用を避けたい場合は、AIオプトアウトに対応したEnterprise版も用意されています。
制作内容や扱う映像に応じて、利用するプランを選べる点も大切なポイントです。
また、Flow Studioで生成したデータの著作権は基本的にユーザー側にある一方、アップロードする映像については、利用者自身による権利処理が必要です。
自分で撮影した映像や、使用許可を得た素材を用意すれば、アイデアをすぐに3Dモーションへつなげられます。素材の権利を確認したうえで、安全に活用していきましょう。
現場アニメーターが感じた精度と可能性
実際にFlow Studioのデータを触った齋藤氏からは、「思った以上に精度が高い」という感想がありました。
特に、足の滑りやノイズが少なく、他の簡易モーションキャプチャと比べても扱いやすいデータだったそうです。
一方、映像に写っていない角度の動きは精度が下がるため、撮影時のカメラ位置や画角にも工夫が必要とのことでした。
それでも、動画撮影からFlow Studioでの変換、Mayaでの調整までスムーズにつなげられる点は大きな魅力です。
「動きの案出しが圧倒的に楽になる」
制作初期の工程を効率化できる点にも、大きな期待が寄せられていました。
Flow Studioと相性のよい動き・撮影条件
Flow Studioは、定点カメラで全身の動きがしっかり映っている映像と相性がよいようです。
特に、次のような動きに向いていると紹介されました。
相性のよい動き
- カットシーンのように、見せるカメラが決まっている動き
- 日常動作やバストアップでの演技
- VTuberのショート動画のような、固定カメラを前提としたダンスやアクション
一方、次のような撮影条件では、モーションの精度が下がりやすいとのことです。
精度が下がりやすい撮影条件
- 広角レンズを使用した映像
- ハイアングルやローアングルから撮影した映像
- 複数の人物が重なるシーン
- カメラの動きが大きい映像
Flow Studioの精度を引き出すには、「キーポーズが映える角度で撮る」「望遠寄りのレンズを使う」といった撮影時の工夫も重要です。
現場アニメーターが考える、Autodesk Flow Studioの活用例
齋藤氏からは、実務を想定した具体的な活用例も紹介されました。
1 演技プランやVコンテの案出しを高速化
自分で動きを撮影し、Flow Studioで変換したデータをMayaで調整することで、演技プランやVコンテの案を素早く形にできます。
2 アニメーター以外の職種にも活用できる
プランナーが仮モーションを作成したいときや、モデラーがモデルの挙動を確認したいときなど、まずは動かして確認したい場面で大きな時短につながります。
3 動きを形にする最初の一歩を支えてくれる
頭の中にある動きのイメージをすぐに形にできるため、動きの案出しに悩んだときにも心強い選択肢になります。
現状は1台のカメラで撮影した映像に対応していますが、動きに合わせてカットを分けるなど、撮影方法を工夫することで精度を高めることも可能とのことでした。
CG業界で考える、AIとの付き合い方
セミナー後半では、AIの進化によってアニメーターの仕事がどう変わっていくのかについても話が及びました。
齋藤氏は、「いつか仕事が奪われる可能性はゼロではないが、すぐではない」と率直に語ります。
AIが生成したモーションにも、人の手による調整や仕上げは欠かせません。ゼロから動きを作る機会は減っていくかもしれませんが、その分、動きの良し悪しを見極める力や、演技を理解する力がさらに重要になるとのことでした。
吉田氏も、 「AIは仕事を奪うためではなく、クリエイティブな時間を増やすためのもの」 と強調します。
AIと一緒に作る時代に、自分の技術や表現力をどう磨いていくか
これからのアニメーターには、そんな視点も大切になりそうです。
まとめ
今回のセミナーを通して見えてきたのは、Flow Studioが“アニメーターの代わり”ではなく、アニメーターの発想や表現を支えるツールだということです。
動きのラフや演技プランを素早く形にできる一方、精度を引き出すには撮影の工夫が欠かせません。また、生成されたモーションを仕上げるには、動きの良し悪しを見極める力や、演技を理解する力がこれまで以上に重要になります。
学習データやアップロードする映像の権利を正しく理解したうえで活用すれば、案出しや制作初期の工程を効率化し、アニメーターがよりクリエイティブな作業に集中できそうです。
AIとアニメーター、それぞれの強みを活かした新しいモーション制作。
Flow Studioによって、モーション制作に新しい表現やワークフローが生まれるのか、今後の動向にも注目です。
登壇者

オートデスク株式会社
技術営業本部 M&E テクニカル セールス スペシャリスト
吉田 将宏(よしだ まさひろ)氏
北海道利尻島出身。前職は建築系CGプロダクションに所属。パース制作、動画制作、VR制作などの建築ビジュアライゼーション業界での経験を経て、2018年オートデスクに入社。 現在はFlow Studioや3ds Maxの技術営業として、アニメ、映像、ゲームなどのエンターテインメント業界から、建築、製造などの非エンターテインメント業界まで幅広いお客様の支援を担当。

株式会社クリーク・アンド・リバー社
第三デジタルコンテンツ・グループ 第一ディビジョン 第一セクション
齋藤 主馬(さいとう かずま)氏
アニメーターとしてCGアニメーション会社に勤務した後、2023年4月に同社に入社。その後コンシューマを中心に幅広く経験。現在はチームリーダーとして制作と組織運営に尽力中。

