3D動かさNight!「プロの3Dアニメーターが教えるポージングのコツ」セミナーレポート⓵

こんにちは。COYOTE 3DCG STUDIO アニメーションチームの松尾です。
第2回「3D動かさNight!」では、「プロの3Dアニメーターが教えるポージングのコツ」と題して、ポージングについて紹介させていただきました。
本記事では、セミナーの内容を振り返りながら、「アニメーションにおけるポージングの考え方」を、説明したいと思います。
今回のセミナー内容は前後編に分けてまとめていきます。

後編もよろしくお願いします。

ポージングの魅力と重要性

ポージングはキャラクターの個性や、魅力を引き出す重要な要素といえます
どんなキャラクターなのか、ポーズ1つで伝えることができます。

さらに、アニメーションの魅力を引き出す要素ともいえます。
アニメーションの意図を的確に、または魅力的に表現する上でも欠かせない要素です。
アニメーションを作成するフローとして、まずラフでモーションを作る場合が多いのですが、要所要所となるキーポーズや見せ場などは与える印象が大きいので、とくにポーズを作りこみます。
という事もあって、アニメーションを作る最初の1工程として、キーポーズ、ポージング作成はとても重要な要素です。

基本の待機ポーズを作ってみよう


実際に「待機ポーズ」を例に、ポージングに重要な事はどんなことなのか、データを見ながら説明していきたいと思います。

まず待機ポーズとは、
インゲームアニメーションにおいてプレイヤーが操作していない時にとっている、基本のポーズになります。
Idle、アイドリング、待機モーションなど様々な呼び方があります。
キャラクターの個性を表したり、プレイヤーが一番目にするポーズになるので、とても重要です。
また、移動、攻撃、エモートなど様々なモーションの派生元となり、後の工程にも関わってくるので、基本的には一番最初にこちらのポーズを作成します。

今回はブログでおなじみ、ミュリシアというキャラクターの待機ポーズを作成してみました。
簡単なキーワードとして、
・まずは女の子のキャラクターであるということと、
・待機なので、リラックスした、楽なポージングであること。

この2つをキーワードとして作成しました。

実際に作成した待機パターンを比較して説明してみましょう

←左側 が、作成途中のものです。
待機のポーズ…にはなってるんですけど、これだと60点…という感じですかね。

右側→ が、更に作りこんだものになります。
どうでしょうか、違いが分かりますでしょうか


重心の重要性


まずは、よく、「体重を乗せる」という言い方をするんですが、こちらは重心の事になります。
これは、実際に自分で立ってみた時に、どちらかの足に体重を乗せて立つ方が楽だなーと感じる事が多いと思います。
どちらかの軸足に体重が乗っている状態がリラックスした立ち方に見えると思います。
今回こちらのミュリシアは右足に体重が乗っているのが分かると思います。
まず第一にこの「体重が乗っているか」、重心はおかしくないかは 重点的に意識して作成しています。
これがしっかりできてないと、倒れそうとか、違和感につながって不自然に見えてしまいます。
なので、とても重要だと思います。

ラインとシルエット

肩と腰の向きをずらす事で、ひねりができ、ポーズに複雑さを加えています。
女性キャラクターという事もありこのひねりを大きく加える事により、より女性らしさを表現しました。
真っ黒のシルエットにした時も、女性キャラというのが伝わると思います。
この真っ黒のシルエットはとても重要です。
今回は1キャラクターの1パターンのみの作成してますが、実際にはいろんなデザインのキャラクターを複数体分ポーズを作成することになります。
その際に、このシルエットの状態でも違いや個性が出ててキャラクターが判別できる事を心がけると良いと思います。
3Dに限らず、2Dのキャラクター立ち絵などでも同じことが言えますね。

正中線を意識

これは個人的に意識している事なんですが、
正中線(真ん中の線)に対して、左右均等のボリュームになるように心がける事が多いです。
できるだけ、中央にまとまるように意識してます。
前述しました通り、待機ポーズからモーションが派生する事が多いので、
中心から大きく外れていると、モーションに遷移した際に調整が必要だったり、
見え方が悪かったり、けっこう不都合が多いです。
できれば、中央にまとまる方が良いかなと思います。

実際に動かしてみました。

待機なので、主に呼吸しているアニメーションと。しっぽの揺れ。
それから、瞬きと、耳を揺らしてみました。
耳は、左右で動くタイミングをずらすことによって、少し複雑さを入れてます。

別のアプローチから待機ポーズを考えてみる

作例として1つ
こちらはアプリボットさんから配布されているフリーリグを使用して作成した待機ポーズですが、
前述の通り、重心やキャラクター性を意識して作成しました。


ポイントとしては、武器を持っているという所から、戦闘するキャラクターという想定をして、
足を少し開き気味にしたり、身体を半身(はんみ)開いてみたり、あと手にも少し力が入っているように見えるようにしてます。

横から見たときに、S時になるように意識してますね。
ちょっと腰を突き出し気味にすると、力の入った立ち方になります。
この立ち方って、昔の2Dドットの格闘ゲームの立ち方でよく見るシルエットです。
カプコンのドット絵の格闘ゲームとか力強い立ち方がすごくかっこいいので、今でもよく見ています。

それから、こちらのバックのビューがなにを意味しているか分かりますでしょうか…

これは、3人称視点、TPS視点のゲーム画面を想定て設定したビューです。
よくある、キャラクターの背後にカメラがある3Dアクションゲームがだいたいこんな見た目になるかなと。
Maya上では360度あらゆる角度から確認できますが、
実際のゲーム画面ではカメラが決まっていたりある程度制限があります。
こちらみたいにTPSだったり、あとはサイドビューの横スクロールだったり。
待機ポーズが、ゲーム画面の中で一番多く目にするポーズなので、この画角がプレイヤーが一番見るポーズという事になると思います。
作成しているゲームではキャラクターがどういう見え方になるのかも意識して作成すると良いと思います。

実際にゲーム画面に出すと、maya上で見たときと印象が違ったりするので、実機に出して確認して調整してという
作業を行き来することはよくありますね。
インゲームアニメーションにおいては、ゲーム上での見え方が最重要ですので、必ず実機で確認を行ってからFIXしましょう。

まとめ

今回は、セミナーの最初に説明した、「待機」についてまとめてみました。
「待機」はキャラクターの個性や魅力が一目で伝わる重要なポーズです。
とても気を遣う、難しい点ではありますが、キャラ付けできるとても魅力的な作業だと思います。

後編では、さらにキャラクターの魅力を引き出すポージングについて説明したいと思います。

3D動かさNight!「プロの3Dアニメーターが教えるポージングのコツ」セミナーレポート②

F.Matsuo

COYOTE 3DCG STUDIO所属 アニメーター。ゲーム開発会社を経て現在COYOTEにお世話になっております。
デフォルメだったりアニメっぽいテイストが得意です。
だいたいFF14の事しか考えてません。メインジョブはタンク。

投稿者記事

  1. 3D動かさNight!「プロの3Dアニメーターが教えるポージングのコツ」セミナーレポート②

    2025-06-27

  2. アニメーションの基礎 グラフ(カーブ)の特徴について

    2025-05-30

  3. インゲームアニメーションにおけるフレームレートについて

    2025-04-28

  4. アニメーターのための Mayaの基礎ガイド

    2025-04-11

関連記事

  1. インゲームアニメーションにおけるフレームレートについて

    2025-04-28

  2. 3D動かさNight!「プロの3Dアニメーターが教えるループモーションの基礎」セミナーレポート

    2025-03-07

  3. アニメーションの基礎 グラフ(カーブ)の特徴について

    2025-05-30

  4. アニメーターのための Mayaの基礎ガイド

    2025-04-11

ページ上部へ戻る