こんにちは。COYOTE 3DCG STUDIO アニメーションチームの松尾です。
前回の記事、「3D動かさNight!「プロの3Dアニメーターが教えるポージングのコツ」セミナーレポート①」に引き続き
セミナーの内容を振り返りながら、「アニメーションにおけるポージングの考え方」を、説明したいと思います。
今回のセミナー内容は前後編に分けてまとめていきます。
後編もよろしくお願いします。
前回の記事はこちらになります。
3D動かさNight!「プロの3Dアニメーターが教えるポージングのコツ」セミナーレポート①
テーマでポーズを作ってみよう
かわいいポーズを作る!!
今回はポーズをスタジオのジュニアクラスのスタッフに作成していただきました。
まず、ポーズを作成する上で、どんなポーズにするかというのを考えるのはとても重要です。
表現したいアニメーションを作るのに効果的なポーズはどうか、キャラクターの性格や行動の意味など掘り下げて考えます。
今回はとにかく「かわいいポーズを作る」というお題で、お願いしました。
・ミュリシアという獣モチーフの女の子。
・明るく元気いっぱいのポーズ
とにかくかわいく作るという目標で作成していただきました。
こちらが、ジュニアクラスのスタッフに作成していただいたポーズになります。


■スタッフコメント
片足立ちで決めポーズを取る想定で制作。
左足を勢いよく膝より上にあげて、元気っ子を演出しました。
手を鉤爪の形にし、顔の横まで上げる事で、ミュリシアのモチーフ(獣)らしさを出す狙いがあります。
腰と上半身の捻りでポーズのバランスを取りつつ、頭からつま先のラインでC字、S字を作りポーズに柔らかさ、女性らしさが出るよう祈りながら制作しました。
元気ということで、勢いよくあがった足など元気よさが出てますね。
身体の角度に対して、首をかしげているのも女の子らしい可愛さの表現になってると思います。
それから肘が上がって、脇が空いているのも元気を象徴するのに大事な要素です。
シルエットが大きくなるのは「解放感」など「元気」をな印象を与えます。
しっかりと考えて、
元気さが表現できている、良いポーズだと思います。
もうちょっと魅力を引き出してみる
もう少し、キャラクターの魅力を引き出せないか、手を入れてみました


どうでしょうか。
先ほどのポーズと比べて
全体的には、「整えた」という感じになるのですが・・・
どのように調整を行ったかを説明していきたいと思います。
比較しながら詳しい説明
正面


まず正面ですが、待機ポーズでも説明しました通り、「体重を乗せる」というのを意識して、腰の位置と傾きを調整しました。
重心がズレないようにという考え方から、腰を中心に持っていきがちですが、
実はこれ、腰の位置は修正前と比べて、外(左側)にもってきてます。
で、傾きを大きく内側にすることによって、重心をコントロールしてます。
それから、しっぽの位置ですね、手とかぶってしまっていて、あまり認識できません。
あと左側には左足もあるので、パーツの要素というか、情報量が多くなってしまっています。左側がなんか密集してますよね。
右側に置くことでバランスを取りました。それから、身体から空間を作ることによって、しっぽがあるというのがわかると思います。

それから、耳の向きに注目してほしいのですが、
スカートが向かって左側から左に向かって流れているのにたいして、耳は反対に流れるようにしています。
このポーズの、前後の動きや流れが見えてきやすくなったかなと思います。
横側


横から見たときですが、こちらも重心の調整を行っております。
左手の位置が後ろに引いているのが、ちょっとポーズが窮屈に、無理しているよな姿勢に見えたので思い切って左右をほぼ同じ顔の真横にもってきました。
左右で差異をつけて、空間を作るのも場合によっては効果的で良いのですが、今回はストレートな表現にしてみました。
それから、膝の位置を調整を行いました。
足の位置自体は変わらないのですが、足が寝ている、平行になっているので、
正面から見たときにあまり効果的に感じないと思ったので、
膝を内側に入れることによって、角度が大きくなり、より一層足が上がっているような印象になると思います。
3Dビュー


3D空間で見たとき、角度が変わっても印象があまり変わらないように気を付けています。


左側は少し角度が変わるとちょっとバランスが悪い印象を受けます。
あと少しカメラを回すと、顔が手に隠れちゃって、キャラクターがよく見える角度が狭くなっちゃってました。
見る角度が変わっても、顔がよく見えるとか、かわいいポーズがよく見えるように心がけています。
それから、足のシルエットですが、
こういう、リアルというよりはイラスト的なキャラクターなので、手書き感というか、
イラスト的なラインとシルエットが出せたかなと思います。
いかがでしたでしょうか・・・
今回はとにかく「かわいく」というテーマでしたが、テーマを元にいくらでもポージングを突き詰めていくことができます。
自分の考える「かわいい」「かっこいい」を突き詰めてみてください。
ポージングフィギュアの利用
ここまで3Dモデルのキャラクターで説明を行ってきましたが、
ポージングは3Dモデルに限らず、市販のポージングフィギュアの利用でも立派なポージングができます。
アニメーターはけっこうみんな持ってるかなと思います。可動域も抜群でいろんなデザインのアクションフィギュアが出ています。
3Dアニメーターに限らず、だれでも使えるアイテムで、気軽にポージングを作ることができるのでぜひ活用してみてください。

まとめ
最初にお伝えした通り、キャラクターの魅力やアニメーションの意図を伝えるうえでとても重要という事が伝わったでしょうか。
3Dアニメーションを作る上での最初の工程の1つにすぎませんが、”キャラクターに命を吹き込む”とてもクリエイティブで楽しい工程です
ひとつひとつのポーズには、そのキャラクターの想いや感情、物語の流れが詰まっています。
今回のセミナー記事を通して、ポージングの奥深さや面白さを少しでも感じていただけたなら嬉しいです。
皆さんの創作活動の手助けになれれば幸いです。